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 [大阪]モリタ食材開発研究所(大阪市城東区今福南、守田悦雄社長)は九日、バイオテクノロジーの一手法であるバイオリアクター(生体化学反応装置)を利用したしょう油の生産法を工業的スケールで確立に成功したことを明らかにした。


 この方法によると従来六ヵ月かかっていたしょう油の生産が二週間でできるとともに、防腐剤、防カビ剤の添加が不要で、品質、風味も向上、コストも十分の一にダウンできる画期的なもの。


 バイオリアクターは、現在、エタノールなどで実用化研究が活発に行われているが、複数の菌体を使用、しかも実際の食品プロダクトの工業的生産に利用されのは世界でも初めて。


 すでに国内、海外から技術引き合いが相次いでいるが、この技術が本格的に産業利用されることになると、一社で全需要をまかなえる可能性があり、業界の混乱を招くのは必至で、同社では慎重に対処していく方針である。




 同社が開発したバイオリアクターによるしょう油の生産法は、ペディオコッカス・ソーエ、ペティオコッカス・ハロフィルスなどのしょう油乳酸菌、サッコロミセス・ルーキシと呼ばれる主発酵酵母(S酵母)、トリロプシス・エッチエルシー、トリプロシス・ベルサチリスなどの後熟菌(T酵母)の三種の生きたままの菌体をそれぞれアルギン酸、海藻からとれる天然の多糖類であるカラギーナンに固定化し、これを詰めた生体化学反応器に麹、食塩、水などから作られた発酵原液を通過させると、高品質のしょう油が安定して連続的に生産できるというもの。


 従来しょう油の生産は大豆、小麦を原料にもろみを作り、これを発酵熟成させるシステムをとるがこれによると、天然熟成で一~一年半、温醸法でも六ヵ月の長い時間がかかった。


 これに対し、同社の確立したバイオリアクターによる生産法は、二週間でしょう油が得られるとともに、設備費、製造コストとも十分の一に大幅に低減でき、しかも完全反応しているため二年間放置してもカビの発生がなく防腐剤、防カビ剤を添加をする必要がない、著しい風味が増強されるなど商品価値としても格段に向上する。


 バイオテクノロジーの実用化は大規模生産が可能となり、マーケットサイズによっては、実用化の際に避けられない問題だけに、今回、新しい生産プロセスの動向が注目される。


化学工業日報(抜粋)1982年12月10日
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