食品・包装業界の動き
焼酎のもろみで健康食品素材の開発に成功。
牛乳焼酎、温泉焼酎などの醸造元で知られている合資会社大和一酒造元(熊本県人吉市、TEL0966-22-2610)は、焼酎の醸造工程の醸造もろみの有効利用に取り組み、新技術で、醸造もろみに含まれるアミノ酸、クエン酸、食物繊維等の豊富な栄養成分を損なうことなく、アルコール分の分画除去および醸造もろみの粉末化に成功した。
従来、醸造もろみはアルコール分離後、一部家畜飼料等に利用されてはいたが、大部分は産業廃棄物として海洋投棄されてきたのが現状である。 しかし、ロンドン条約により’07年にも海洋投棄が全面禁止されるため、ゼロエミッションを目指すリサイクルは、焼酎業界全体の大きな課題として、様々な取り組みが試されている。 同社は、常にアイデアを生かした個性的な焼酎を開発する中で、優れた栄養成分等を豊富に含有する醸造もろみを健康食品の素材として提供するべく試行錯誤を繰り返し、独自技術による粉末化プラントを完成、実用的な方法で醸造もろみの各種加工食品、化粧品用途等への利用を可能に成功にした。 この醸造もろみはアルコール分が残存せず、原料由来のアミノ酸、クエン酸、植物繊維を豊富に含有し、粉末自体がそのまま健康食品として、また健康食品や洗顔石鹸・パック等の化粧品の素材として最適な粉末である。 (株)モリタ食材開発研究所(大阪市)の協力を得て、タブレット化をはじめ、食品用途向けに積極的に取り組む体制を整えた。 更に産学共同研究により、焼酎の醸造もろみの栄養生理学的研究にも取り組み、その結果、多方面への汎用性を模索し、資源としての活用範囲を広げることにより、ヒトの健康づくりに貢献していきたいとしている。 栄養生理学が専門の神戸女子大学大学院家政学研究科の梶原苗実教授は「焼酎ブームによる生産量拡大に伴い、各醸造元は醸造もろみの処理方法について一層苦慮している時期だけに、今回の無から有の付加価値の高い商品の開発技術の確立およびその販売は注目される。 特に芋・麦・米等の原料の違いと、各社の醸造ノウハウによって醸造もろみの成分とその機能性にそれぞれの特長が異なれば、その機能研究および利用した食品・化粧品に焼酎の産地毎、醸造元毎の個性が表れる可能性もあり、楽しみな素材である」とコメントしている。 |
食品加工と包装技術誌 ジャパンフードサイエンス 2005年10月号 抜粋 発行所 日本食品出版株式会社 |