しょうゆ作り2週間 -メーカーと研究所協力- 生物工学で大幅短縮 |
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四国の中堅しょうゆメーカー、加賀屋醤油(本社・徳島県名西郡石井町、近藤嘉克社長)と食品関連のベンチャービジネス(先端技術開発志向型企業)として知られるモリタ食材開発研究所(大阪市城東区、守田悦雄 代表)11日、バイオテクノロジー(生物工学)の一つであるバイオリアクター(生物反応器)を利用して、これまで6ヶ月かかったしょうゆ作りを一挙に2週間に短縮する「連続速醸法」の開発に成功したと発表した。しょうゆ製造期間の短縮により、しょうゆメーカーは投下資金の回転率がよくなるメリットがあり、その結果、しょうゆのコストを大幅に引き下げることも可能とみられている。 同法は、熟成工程をカンテンようの物質に包んだ乳酸菌、酵母など固定化微生物で連続的に3日間行うもので、すでに日産300リットルのパイロットプラントを加賀屋醤油内に完成、試作品を無料で配布している。 しょうゆ作りをスピードアップする技術の開発は、各醸造メーカーで競われている。これまでしょうゆの製造は、ダイズ、小麦をコウジ菌で醗酵させモロミを全くの自然状態下では1年、温度を加える近年の方法(温醸法)でも6ヶ月間、"寝かせる"ことで乳酸菌や各種酵母菌による発酵をゆっくりと行っていた。この工程を急いで行うと雑菌が繁殖するため、食塩分で雑菌の繁殖をコントロールしつつ時間をかけるのが、おいしいしょうゆをつくるコツと考えられてきた。 新しく開発された方法では、大豆、小麦に麹菌を加えたあと、各種アミノ酸に加水分解してバイオリアクターに送り込む。このリアクターは3つの部分にわかれ、それぞれ乳酸菌、アルコール発酵酵母菌、熟成(後熟)発酵酵母菌をアルギン酸などの物質に封じ込めた粒(固定化微生物)が詰まっている。送り込まれた液は順番に1日ずつ、この粒の間で発酵してゆく。最後にタンクの中で1週間程度熟成させる。できたしょうゆは、少しあっさりした感じだが、これまでのしょうゆと味は変わらないという。 ところで6ヶ月かかった醤油製造をわずか2週間で行うだけに、同法が実用化されると醸造業界に大きな反響を呼ぶとみられているが、加賀屋醤油では「実用プラントまでスケールアップするにはかなり時間がかかるが、実用化する方向で努力している」(近藤社長)という。またモリタ食材では「この技術には商社からも引き合いが来ており、むしろ、しょうゆが流行している海外で実現する見通しが強い」と、とりあえず海外で実用化していく意向をもらしている。 |
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毎日新聞 1982年(昭和57年)12月12日
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