リンク集

新社屋完成、意欲新た
~知的財産取得支援も~

2010年(平成22年)4月6日(火曜日) 大阪日日新聞
 砂糖の300~450倍の甘さがある植物性甘味料「ステビア」を世界で初めて商品化するなど、”味覚のパイオニア”として知られるモリタ食材開発研究所が3月、新社屋を完成させた。特許戦略で培ったノウハウを生かして、近年は中小企業が知的財産を取得するための支援も行っている。守田悦雄社長は、新社屋の完成に「若い社員にすばらしい演技を演じてもらうための舞台と環境が整った」と、意欲を新たにしている。


 1971年、守田社長が20代のころ、甘味成分を含む南米の植物「ステビア」を文献で発見した。当時はズルチンなど人工甘味料の安全性が問題視された時代。商社を通じて実物を入手し、安全な天然甘味料として食品業界に売り込んだ。カネボウ食品(現クラシエフーズ)が76年に発売した「プレイガム」が、初めてのステビア入りの商品となった。


 認知が進むとともに国内でのステビアの栽培を開始。ステビアには複数の品種があり、葉に含まれる成分のうち、甘みとともに苦味も含むステビオサイドと、甘み成分を多く含むレバウディオサイドAの比率が品種により異なることが分かり、比率により味の広がりが実現した。

 塩からさを抑える成分は、植物研究の過程で発見したというが、どの条件下で塩に添加することで最も効果が得られるのかを突き止めるにはさらに時間を要した。守田悦雄社長は「約1年をかけて、ようやく鋭角的に感じる塩からさをソフトにすることに成功した」と振り返る。


 90年の大塚製薬の「ポカリスエットステビア」の発売で飛躍的に知名度が高まり、現在は世界中でステビア入りの商品があふれている。守田社長は「ステビアとの出会いで、ゼロから世界中に新しい甘味資源を広めることができたのは幸運だった」と振り返る。


 約30年前に菓子問屋を経営する夫婦から「菓子メーカーに転換したい」という相談を受けた守田社長が、ステビア入りの菓子の開発を手伝い、現在では全国ブランドの企業に成長した事例もある。


 「中小企業における知的財産の大切さをいやというほど経験した」と、大手企業に対して対等の立場で事業展開するには、中小企業も特許を取得する必要性を早くから認識していた守田社長。そのノウハウを生かして、同社は現在、中小零細企業向けの「知的財産アドバイザー」としても活躍している。


 また、欧米で12本のバラに12の花言葉を込めて贈る「ダーズンローズ」を普及させる活動も行っている。「ダーズンローズ」は同社の登録商標で、この風習をイメージした12色の口紅や12種類の香水など、贈答用商品を12品目ラインアップし、登録商標をつけて販売する企画だ。


 賛同する企業12社を集めて販売戦略上の相乗効果を生み出す狙いで、専用使用権許諾契約に基づく使用料の一部を福祉団体などに寄付するという。守田社長は「停滞した経済の中で、知的財産を使って社会に少しでも貢献できたらとの思い。できれば2012年12月12日に、花言葉とともに、日本中でダーズンローズの商品が贈られたらこんなにすばらしいことはない」と話している。


(井上 昌之)

大阪日日新聞 2010年(平成22年)4月6日(火)掲載
戻るボタン 主なマスコミ報道一覧 次へボタン