還る

この連休を利用して 家内の実家 美杉村八知に帰った。

この村には 昭和20年から開拓が始まり家内の両親も 満州から命からがら日本に帰り この海抜800メートルの

大洞山の山腹に入植した。

開拓は困難を極め 当時は10数件あった農家も今は2軒になった。  高原野菜で 立派な大根が育ち生活は成り立っていたが

時代の波に飲み込まれ後継者はいなくなった。

かって立派な大根の育った農地も今や元のススキの原野に戻ってしまった。

ちょっと山に入れば 鹿が人を恐る事なく走り回り 木の皮や 野菜を片っ端から食べている

家内の両親が耕していた土地に入ってみたら 歴史遺産の鍬が朽ちかけていた

わずか60余年の歳月が 30代の働き盛りの若者を90歳にしてしまった

石抜きをして 耕作地を作った遺産とも言える石が 石垣として残っている

何だか犬の顔した石が 今でもしっかり土砂の流出を防いでいた。

この地球では 食糧危機が騒がれているが この山奥の開拓地も せっかく耕した土地が又山に還り農地が失われていく。

道中雑草に覆われた耕作放棄地があちこちにあったが いつかまた遺伝子組み換え作物が姿を消し

日本の農業が脚光を浴び 安全な黄金の稲穂や麦や 菜の花で全土が覆われる日の来る事を夢見ている。

和楽輪の家  小林哲博