父からのプレゼント
 
夕方 5時過ぎいつものように 父のインスリンの注射を終えた時
 
ちょっと20〜30分俺と付き合ってくれ と言いだした
 
突拍子もない事に何を言い出すか正直ちょっと戸惑った
 
『てっちゃん お前にお酒を買ってあげるから 酒屋まで一緒に連れて行ってくれ』
 
と言うのである 僕は他にもやりたい事があったのでほんの一瞬迷った
 
しかし これを逃しては酒にありつけない?これは冗談だけど
 
父がそれほどにも言うのには意味がある  そろそろ自分のお迎えが見えてきたのか???
 
隣の菰野町で昔から酒屋をやっている友人がいる 電話を入れた丁度彼は店にいた
 
手短に事情を話し店に向かった 彼は入口まで出迎えてくれた
 
顔を逆さまにしても 彼の顔 あごひげをはやし 落語家の隣のような人なのである
 
その彼が販売元になっている 《 菰野の大物 》 と言う純米酒を買ってもらった
 
父の手で 一万円札を店主に差出し 七千六百円のお釣りを受け取った
 
こんな スローな パホーマンスが酒を美味しくすると僕は思った
 
渡る世間は鬼ばかりの中を好んで歩く人もいる
 
親切の洪水の中を歩く人もいる
 
どちらも本人が気に行って歩んでいる道だから 優劣付け難い
 
雀は鳴いても涙は無いが 誰かの両目は鳴かずとも涙でいっぱいである
 
感謝  感謝  ありがとう